管長の修行問答

2021.06.01

マスク顔

上品なるマナーを身に付けることで口まわりも上品となる

(自分事を棚に上げた質問内容で恐縮ですが)今、マスクをつけた生活をしていますが、顔の目の近辺だけで、「あっきれいな顔」と思っても、マスクをとった顔を食事の時などに見ると、「えっ、この人こういった顔をしていたの?」と思ってしまう時があります。顔のバランスはもちろんのことですが、顔においての鼻や口はどのような意味があり、どういったバランスがいいのでしょうか? また、マスクで全体のバランスがわかりにくく、女性の場合、例え眼だけ見ると普通であっても、マスクがない時、お化粧の仕方か顔がチャーミングにみえて、素敵!って思うことがあります。(静岡・Y)※本問答は2021年6月・420号のものです。

眼は心の窓という。その意味では眼は重要である。眼といっても我々が見ているのは眼のまわりであって瞳そのものではない。瞳そのものは美しくあるのが良い。特に若いときはスッキリしていなくてはならない。歳をとるとだんだんと老化し若い時の美しさは失われていくもキリリと締まった眼は良い眼である。更に清々しい眼や優しい眼はそれ以上である。

いまどきの若者は男女ともに眼周囲の化粧が上手になったが、その化粧を落とすと全く別人になってしまうのには呆然とさせられる。いまの若い人たちが目の化粧に力を入れているのは一つの進歩ではあるだろうが、高校生で付けまつげまで付けられると大概にしなさい、と注意したくなる。まあ何であれ、日本の女性が美を追究し始めたことは悪いことではないが、心を無視しての美など有り得ないことに気付く必要がある。

眼にはその人の知性や意欲が反映する。厳しい人には鋭い眼が、知的な人には穏やかな眼が表われる。卑しい人には卑しい眼が宿る。それらもマスカラやアイシャドーなどを駆使すると全く別な眼を演出することになり、悪人も善人かの様に化けることが出来る。

一方、鼻、口にはその人の心が表われる。上品下品はここに表われる。不平不満もここに表われる。これは遺伝も関わるが、それ以上に親の教育に大きく作用される。いつもいつも不平不満を言っている者は、口が尖り、また下品に食事する者は唇がだらしなくなる。歯の乱れは心の乱れとも同義である。その様な人は矯正するのも手である。西洋人が概して美形であるのは親や社会が食事や礼節のマナーを厳しく教育するからである。品性は口に出ることを心しておかなくてはならない。その為にも日本の社会全体に品性についての徹底した教育が施されなくてはならない。改めて学校教育の見直しを考えなくてはならないだろう。