管長の修行問答

2021.07.01

愛する人との別れ

素直な心で語りかけ想い出を話し感謝と愛情を伝えること

①愛するということは、どういうことなのか、どうしてあげれば良いのか。たぶん残り少ない命だろうなと思える人に、私はどんな言葉をかけてあげれば良いのか教えて頂けますよう、よろしくお願い致します。(神奈川・K)
②苦しい運命と向きあわなければいけないとき、どんな心で受け入れたらいいのか教えて頂きたいのです。よろしく願いいたします。(鹿児島・T)※本問答は2021年7月・421号のものです。

①愛する人がその命の炎を消そうとしているとき人は優しい心持ちで接してあげなくてはならない。その相手と自分の関係性の違いで、その態度行為には若干の違いが生じるとは言え、基本は優しい心で接し続けることである。親や恩人に対しては感謝を述べる必要がある。親に対しては、自分が如何に愛していたかを語る必要がある。親のあの時この時の想い出を通してその愛に感謝し自分のわが儘を詫び、何よりずっと愛していたことを伝えてあげることが一番である。大好きだったと照れることなく素直に言葉にすることである。親からの愛情を感じて幸せだったことも語る必要がある。安心を得られていたことも。

もしその人が苦しんでいたならば、身体をさすってあげることだ。手から伝わる愛情がどれだけ救いになるか子はそのことを充分に知らない。兄弟にも同様である。配偶者や親友に対しても同様である。あなたの存在がいかに自分を支えてきたか語っておかなくてはならない。そして多くの共に過ごした時間について語ることである。あの世について語るのもあなたの務めかも知れない。


②苦しい人生の時は第一に全人類が必ず一回は同じ体験をしている事実に気付くことである。隣でニコニコしている平和そうな人物も必ずその体験があることを理性で理解することである。この事実を知っただけで人の心は随分と楽になるものである。苦しい体験をしない者などただの一人もいないのである。自分一人だけと勝手に思い込むことで人は絶望感に襲われ始めるのだが、実は皆同じなのだ。

だからこの苦しみを「どんな心で受け入れたら・・・」と思う必要はない。受け入れたくない事なら数年間ぐらい受け入れなくて構わない。あなたの心が受け入れられるようになるまで、十年だって二十年だって放っていてよいのだ。 そして、毎日のルーティンだけをコツコツとやり続けなさい。いつもの通り決まった事を決まったようにやって一日を終えればいい。そして眠りまた目覚めて一日を始めればいい。その中で一つだけ、神様への感謝の言葉を加えなさい。仏壇など有る人は眠る前にそこに座りゆっくりと心を吐露してから眠りなさい。それで充分である!