管長の修行問答

2013.08.01

地鎮祭

土地神様を鎮める為の子孫に伝承すべき大切な儀式である

最近建物が建つ前に地鎮祭を行なっている様子を見ないような気がします。私は地鎮祭は必要なのではないかと思っているのですが、そもそもの考え方を教えていただければと思います。(東京・S)※本問答は2013年8月・326号のものです。

地鎮祭などを行なうのは、インディアンの様な文明が遅れた人たちであると西欧では思われてきた。しかし日本やいくつかの国に於いては、先進国となったいまも、地鎮祭を行なっている。

これは、土地神様(霊)に対する礼を成しているのである。あなただって、自宅に人が来た時に、挨拶もしないでズカズカと土足で家の中に入ってこられたら、許せないに違いない。地鎮祭とは、この時の挨拶の様なものである。

如何なる土地にあっても、何千年という単位で、そこには古い土地神が住んでいて、その土地を守護しているのである。村や町だけではなく森や山なども然りである。全ての地球上で、夫々の土地に夫々の大小様々な土地神が存在するのである。〝神〟と言っても、勿論、神ではない。大昔の人間である場合もあるし、仙人の様な存在である場合もあるし、動物などの場合もある。

霊がいることもある。それらは強い力を持っていないが、礼を失すると小さいなりに痛い目に遭うことがある。

土地ではなく、一本の大木などに修行霊が憑いていることもある。もっと低いが純粋な精

そういう訳で、土地に杭を打つ時には、先ず初めに地鎮祭をして、工事関係者皆で、土地神にお断りをして、礼を尽くしてから、着工するのである。そうしなければ、工事中の事故が生じ易くなる。こんな事を言うと、何もしなかったが、誰もケガ一つしなかったと反論する人がいるのだが、それは理を知らないからである。

土地神と言ってもピンからキリまである。仮に地鎮祭をやらなくても、工事主たちが普段から善人で、優しく真面目な心で、工事をやっていれば、優しい土地神なら許してくれるのである。土地神といっても、千差万別であるのだ。一様に語ることは出来ない。

何であれ、「礼」は大事である。目には見えなくとも、心を込めて土地神を供養し礼を尽くしてから、感謝をして着工すべきである。棟上げ式を挙げるのもその流れの一つと心得ておくことである。

科学文明偏重の時代になり、人々はこういうことを余りに軽んじる様になったけれども、昔からのこの種の仕切りは絶やすことなく継承していかなくてはならない。