管長の修行問答
2022.12.01
後輩の御し方
過剰に意識することなく自分らしく自然体で接するが一番
- 年上の人を敬う大切さはわかるのですが、年下の人たちとは、どのような心構えで接するべきでしょうか。社内で一~二回り下の後輩も増え、世代間ギャップも感じるようになりました。彼らにも独自の世界があり、こちらの小言は、聞き入れないことは自分の経験から言わないようにしているのですが、これでいいのでしょうか。(三重・K)※本問答は2022年12月・438号のものです。
-
時代は完全に若者中心となってしまったが、だからといって年長者がその自分の存在を否定するようなこと
があってはならない。いかに時代が変わろうとも、上下関係が消え去るものではない。欧米文明が世界を席捲したのは二十世紀までである。この二十一世紀は東洋の時代へと移ることになる。東洋の価値感は長幼の序にある。礼儀正しくということにある。その上で、昔よりフレンドリーな上下関係へと移行しているということなのである。欧米に於いて上下関係がないかと言えば、決してそんなことはない。ファーストネームで呼び合ったりするところは確かに日本人の目には違和感があるが、あれはあれで彼らの中で上下や他者に対する敬意といった意識が働いていて、一般に言われる程の横関係ではないのである。そういう意味では彼らには年齢の差よりも思想価値観の差、知的レベルの差、階級の差による差別意識の方が強く作用していると言えるかも知れない。
要するに「あなたもあなたでいい!」ということであるのだ。いたずらに若者に媚びる必要など全くないのだから、変な思惑を持つべきではない。ただ、何の前ぶれもなくいきなり電話するといった行為はいまの若者には嫌われる。あちらの都合があるのだから、先ずはメールで確認をとってからにしてほしいというものだ。こういうことには筋が通っているので、我われも見習うべきところである。
しかしそういうことではなく単に若者好みということに先輩が媚びる必要はない。もちろん彼らが不快になることをわざわざ口に出す必要はないが、言う必要がある時には叱ってでも言う必要がある。それが社員の義務でもある。
その上で、いい先輩を心掛けることである。今時の子は平等意識や人助けやのんびり楽しくといった思考の持ち主なので、その辺は彼らに合わせながらも「責任」という一文字だけは決して譲ってはいけない。社員としての責任や義務や誇りについては、一本筋を通してあげることが重要である。そういうことは時代に関係なく人としての基本とすべき精神であるからだ。もしそんな事も分からぬ相手なら無視するしかない。でも大半は素直ないい子たちである。愛情をもって接するならきっとうまくいくものだ。