管長の修行問答

2022.07.01

論理的思考

理よりも感情を中心に想像展開させる訓練から入るとよい

論理的に考えるというのは、どのように考えることでしょうか。自分は考えるのが苦手です。又、論理的に考えるために普段、どのように心がけて生活するべきでしょうか。(三重・K)※本問答は2022年7月・433号のものです。

現実問題として論理的思考が出来る人は少ない。アメリカなどではディベートの訓練を小学生の時からさせられるので、日本人より圧倒的にその能力は高い。

色々と方法はあるのだが、一つ大きなポイントを言うと〈相手の立場で話す〉訓練から入るといい。

何事かを議論するというのは、基本的には相手の考えと自分の考えをぶつけ合うことである。この場合、自分の考えが未成熟だと簡単に相手に論破されてしまうことになる。その意味では当然のことながら、精緻な論の組み立てが出来なければ、論戦など出来るはずもないのである。だが、そもそも論理的思考が苦手な人はこれが出来ない。そういう人の場合には、相手が何を感じているかを考える訓練から入るとやりやすい。論理が苦手な人も感情については想像理解できるからである。やり方としては、

  1. 自分と対立する相手は何を感じているかを想像する。
  2. 間違っていてもよいので次々とその相手の感情とそれによって相手がしてくる言動を次に想像する。
  3. 次に相手のその感情的言動に対して自分の意見を言う。
  4. それに対する相手の感情を想像する。
  5. それによって相手の言動を想像する。
  6. それに対する自分の感情なり反論を想像する。

以上を繰り返すのである。

理詰めでやろうとするとあなたの様な論理的思考が苦手な人は先に進めないので、感情だけの論戦を妄想するのである。感情ならば、自分の中にいくらでも湧いてくるので想像はたやすい。勿論、それが正しいとは限らないのだがそんなことは無視してよい。とにかく感情のぶつけ合いが相手と自分とで展開することが重要である。その妄想を毎日繰り返していると、少しずつだが、知らないうちに少しだけ論理的に思考するようになっているものである。

こうして相手の思考や感情を想像してみる訓練は思いのほか論理的思考の役に立つものである。感情だけを追いかければよく、そこに理論がある必要は全くない。要は相手の立場になる、ということである。その習慣が身に付けば驚くほど上達することになるだろう。

ただ、論など立たなくとも優しい心で誰とも接し仕事を真面目にやっている人には魅力があり、皆から好かれるということも覚えていてもらいたい。