管長の修行問答

2015.03.01

内面の葛藤

人は葛藤により成長し遂に葛藤を消失させて仏陀となる

内面に葛藤のない人は何も起こらないでしょうか?※本問答は2015年3月・345号のものです。

起こらないとは限らない。人間の幸・不幸には大きく二種の作用が有る。一つは外部要因であり、一つは内部即ち自身の心理状態に起因するものである。

心に葛藤を持たない人のことを述べると、彼らは常に明るく肌艶も良く、見るからに健康そのものである。常に前向きで意欲的であるから、何事もとんとん拍子で進み、立身出世も楽々と成し遂げる。そうならない例外は知能が低い場合である。流石に出世は難しいが、周囲の人から可愛がってもらえて幸せとなるだろう。

ところが、これは理想の展開であって、果たして葛藤が無いということが有り得るのかということになる。人はそこに何らかの問題意識を持つからこそ努力をするのであって、それらの一切が生じなかったならば、果たして努力をするだろうかという疑問が生じるのである。仮にそういう人物がいたとしたならば、それは生まれながらにして聖人と呼べる様な人だろうと思われる。何であれ、葛藤なく生きることが出来る人は幸せである。

ところが、実際の人は前世からの因縁を持って転生してきている為に、いくら今生で葛藤がなくとも、前世の因縁が発生してくることになる。その結果として他者からのトラブルが持ち込まれ、幸も不幸も訪れる。それすら無いとしたらその人は既に完全解脱した人である。

何より葛藤の無い人が真に向上することは無いことをあなたは理解しなくてはならない。葛藤は乗り越えるものだ。