管長の修行問答

2013.07.01

我執

自らの愚かさに気付くことから全ては改善へと向かう

自分の強い、相手を軽蔑する気持ちに閉口します。日常で「敬意を払う」ことを意識において、自分の気持ちを自観する(気付く)ようにしていけば改善していくでしょうか。(滋賀・S)※本問答は2013年7月・325号のものです。

あなたは立派な人である。自分自身のその様な気持ちに対しては、普通の人は閉口することはない。頭で改善しなければと思っても、決してあなたの様に閉口することはないのである。その意味に於いて、閉口しているあなたは実に立派であり、少なくとも一般レベルを一段上に上った人であると言えるだろう。

その改善は、正にあなたが述べる様にその都度、自観することである。この場合は最初に理性で「愚かなことだ」と自覚し、次に自観するとよい。

それとは別に、その意識が、自分の何らかのコンプレックスに起因していることに気付かねばならない。

世界を見ていると、豊かな国の人々と生活が荒れている国の人々を見比べると、明らかに、豊かな国の人たちの方が心が優しいことに気付くのである。荒んだ社会や家庭で育った子ほど心に余裕が無く、他者を受け入れることが出来ない。その事実を自分自身に当てはめてみると良い。

そうやって、その根本のあなたの心の部分に陽を当ててみることである。また、家庭の中や職場等に於いて、心が落ち着けないと、この様な心作用が生じやすくなることも確かである。愛情不足なのである。

自分を守る為に、相手を軽蔑するということは多くの人がよくやる行為である。人は決して強くはない。それ故に自己保全の心理としてこの様な事が常に生じているのである。愚かと言えば愚かだが、寧ろ哀れである。