管長の修行問答
2013.06.01
無常感と苦悩
神によって愛されていることを心の底から信じよ!
- ①『空・無の体験』の御話の中で、無常感があるからこそ他者を思いはかるということを教えて頂きました。無常感がどう作用してその様な気持ちになるのでしょうか。(神奈川・O)
②虚無感、無常感に時折さいなまれ大変苦しいです。非常に重要な作用だとは思いますが、自分の存在が無意味に感じられる事があります。単に自分自身が弱く、人生がうまく行っていないだけで、それらが改善されれば、この感覚は消せるのでしょうか。(茨城・W)※本問答は2013年6月・324号のものです。 -
①無常には二つの感性が大きく作用している。その一つは死へと向かっていく儚さである。如何に元気であろうとも、如何に素晴らしい家族や友人などの人間関係が出来上がっていても、その全てが、死によって全て失なわれていくという一種の絶望感であり、悲しみである。
もう一つは、それ故に、一切の事に心動かされず、金剛心をもって事物の本質を捉える意識のことである。それは徹底的に冷理であり太く強く厳しい。
ここに述べているのは、前者のことである。即ち、儚さや絶望感からは悲しみが湧出してくる。その悲しみこそが自分のみならず、他者への共鳴としての優しさへと変じていくのである。いつもいつも攻撃的で強気で生きている人には、他者の弱さや悲しみは、努力不足や自律心の欠如に映り、彼らに対して厳しく接するものだ。
しかし、悲しみという無常感を持つ者は他者の痛みが分かる者であり、その様な弱い者たちへの慮(おもんばか)りをなす者である。それ故に、無常感を持つ者は欲に陥ることが少なく、優しいのである。そして、無常観を持つ者は心強く、欲に支配されないだけでなく、正しい道を世に示さんとする真の勝者でもあるのだ。
②あなたの無常感は正しい感性である。世の中は正にその通りであって、そうならない世の人間こそ哀れであるのだ。その意味で、あなたは正しい道を歩んでいるのだと自覚してみると良い。と言って、不安や苦痛が付いてまわっているのは辛いことである。そういう人は先ずは、自己肯定をやりなさい。自分は必ずうまくいく! 何とかなる!!と力強く思う人になりなさい。あなた自身の存在が無意味に感じられるのは、あなたが感性豊かであるからだ。
あなたは思いなさい! 神様が誰よりもあなたを愛しておられるということを。そういう時は神様の前に座って心を解放し、只静かに神様に心委ねて語りかけなさい。そして勇気を持ちなさい。きっとうまく行くと信じなさい! そうすればその不安は消えてくれる。いい人になることだ!