管長の修行問答

2009.10.02

コミュニケーション

自分の意見をうまく伝えるには

一人っ子でカギっ子、また預けられっ子(祖父母に)だったせいなのか、人と言葉でうまくコミュニケーションをとり辛いのが悩みです。また人の距離のとり方が下手で、時々人からも指摘されますが、なかなかどうしたらよいかわからず、よく失敗しています。お互いに立てつつ、言いたい事を誤解されないよう自分の意見をうまく伝えたいのですが、御教示ください。(主婦 30代)

第一に不安を捨てて誠実な会話を心掛ければ心配無用!

あなたのような人は多い。
基本的には良い人なのだろうが、現実問題として、周囲からなかなか理解してもらえず、苦労するものである。
幼少の時、親から充分に話しかけて貰えなかった子は、皆、あなたのような傾向を示すものである。
また、近所や学校に仲の良い友だちがいないと、こういう傾向を示す様にもなる。
しかし、それで必ずしも人生の敗北者になるわけではないので、誤解してはならない。
一つの鍵は、あなたが「自信」を持っているか否かによる。自信がある人は会話を恐れない。
とは言え、所詮は、本人の因縁でしかないのだ。

このタイプで優秀な人には、学者や作家が多い。
一人、空想に耽ったり、文献に当たったり、顕微鏡を覗き込んだり、数式を頭の中で追い求めるなどの、研究者には向いているものである。
また、芸術家にも多い星である。
『バカの壁』の著者の養老孟氏は、正にこの典型で、全く友人がいなかったという。遊び相手は専ら虫だった。

さて、どうやったら言いたい事を誤解されないように相手に伝えるか-だが、これは、実際のところ、難しい。

基本は、誠実に、一生懸命、相手に話すことである。
誠実さというのは、思いの外、相手に伝わるものである。
この時、上手に話そうとか、自分を良く見せようなどと考えてはいけない。
誠実に喋ることが一番である。

また、誤解されるのではと、不安になってもいけない。
不安になると、相手からは、不誠実に感じられ、却って良くない。
自分が言わんとしている事が、正しかろうが正しくなかろうが、こうと思ったら、真正面から明瞭に誠実に語るだけで良いのである。それが一番である。

また、勇気も必要だ。
誤解されることを恐れないことも大事だ。
その為には、相手の目を出来るだけきちんと見て喋る習慣をつけること。
他人に何かを言うということは、相手から言い返されることもある訳だから、堂々と語る勇気も必要となる。
世の中というのは、結局は、正しいとか正しくないとかより、勇気をもって(本人の自覚の有る無しに拘わらず)語る者の世界であるのだ。
だから、あなたが常に抱いてしまう「間違ってたらどうしよう」といった否定的意識を、必要としていないのである。

にも拘わらず、間違っているかもしれないから、言うのを止めようと思ってしまうあなたは、大切な人生を、粗末に扱っていることでもあるのです。
あなたの大切な人生です。大事に大事に勇気を持って挑戦することも必要です。

世の中とは、各人が、自分の言いたい事を言い、やりたい事をやっている世界なのである。
単に、積極的か消極的かの違いがあるに過ぎない。
怖がることはない。
あなたも、言いたい事を、誠意を以て、ただ言えば良いのである。
きっと大丈夫!ほんの少しの勇気さえあれば。