大神神社の大神祭
大神神社の大神祭
奈良県桜井市にある大神(おおみわ)神社は、御祭神の 大物主大神 が御神山の三輪山に鎮まり、古来本殿は設けずに拝殿の奥にある三ツ鳥居を通し三輪山を拝するという原初の神祀りの様子を伝える日本最古の神社です。
その由来は『古事記』によると、大物主大神が出雲の 大国主 の前に現われ、国造りを成就させる為に「吾をば倭の青垣、東の山の上にいつきまつれ」と三輪山に 祀 られることを望んだとあります。
『日本書記』でも同様の伝承が語られ、二神の問答で大物主大神は大国主神の「 幸魂 ・ 奇魂 である」と言われたとあります。この伝承では大物主大神は大国主神の別の 御魂 として 顕現 され、三輪山に鎮まられたということです。
大神神社には、他にも 古 の伝承が沢山残っています。その一つ、『古事記』に、大物主大神と 活玉依姫 の恋物語があります。
美しい乙女、活玉依姫のもとに夜になると 大変麗 しい若者が訪ねてきて、二人はたちまちに恋に落ち、姫はやがて身ごもります。
姫の両親は素性のわからない若者を不審に思い、若者が訪ねてきた時に、糸巻きの麻糸を針に通して若者の衣の裾に刺すようにと教えます。翌朝になると、糸巻きが三巻き( 三勾 )残っていました。その糸を 辿 ってゆくと、三輪山に辿り着きました。
これで、若者の正体が大物主大神であり、お腹の中の子が神の子と分かり、糸巻きが三巻き(三勾)残っていたことから、この地を美和(三輪)と名付けたということです。
この物語は大神神社の初代の神主である 意富多々泥古 の出生の紹介の部分で述べられていますが、糸巻きは 苧環 ともいい、糸をたよりに相手の正体を探るという説話(苧環型)は全国各地に残っています。『古事記』のこの物語はその原型ともいえるでしょう。
このように古い伝承を持つ大神神社は、第十代 崇神 天皇の時代、国造り神、国家守護神として 篤 く祀られ、平安時代も、大神祭(おおみわのまつり)、 鎮花祭 、 三枝祭 が朝廷のお祭りとして継続して斎行されました。
現在は、例祭(その社で一番大切なお祭り)が、四月九日に行なわれています。